100年前、関東大震災の混乱時に、このような事件あったとは知らなかった。ましてや、日本人が、この混乱に乗じて中国人や朝鮮人を殺していたなんて。

福田村事件、この事件の背景には、生活や安全が脅かされる状況、本当のことがわからない恐怖がある。人々は自分の身を守るために、置かれた環境の中で、やりきれない思いを持ちながらも犠牲をはらって生きていかなくてはならない。自分の人生とは何なのか?
不安が彼らを支配し、疑心暗鬼が蔓延する。
人々はそれから逃れるため、責任を押しつけ、思い込みで行動してしまう。

今の時代、森監督がこの事件を映画にしようと思った理由はとてもよくわかる。
それは、時代こそ異なるが、今この時代にも類似する点があるからだ。

SNSで誰もが情報が発信できるようになったことで良いこともあるが、一方で無責任な発信や、神経質な反応、誇大表現などの不安要素もある。
組織では、保身や忖度、見て見ぬ振りが当たり前にように行われている。

この作品では、閉ざされた村社会の群衆心理が描かれているが、現代では、誹謗中傷など、オンラインで特定の人間を攻撃するような事件も起きている。

人間関係における不安や疑心暗鬼ほど、人の行動を狂わすものはない。
自分ではどうすることもできない状況であっても、本作で登場する新聞記者のように真実をしっかり見つめ、自分で出来ることは何なのかを考え、行動することが大切なのだ。(★★★★)



●福田村事件公式サイト