映画「市子」は、市子と彼女に関わる人との人間ドラマを描きながら、市子の存在とその人生を目撃し、人の尊厳とはなにか?人の幸せとはなにか?を考えさせられる映画です。
なんといっても、市子役の杉咲 花の演技が素晴らしかった。
彼女の役に対する想像力がなければ、この作品は成り立たなかったと思う。
おそらく、監督自身も絵を撮っていてそう思ったに違いない。

映像表現として面白いと思った点として、シーンの並べ方がある。
本作では、白骨遺体が発見された事件と、市子の突然の失踪という二つの出来事を追う形で、時間を交差させながら物語が展開される表現だ。
この手法はオードリー・ヘップバーンの「いつも二人で」などでも使われていたと思うが、これによって、市子の人生がどのようなものであったかが、まるで謎解きをしているようにじわじわ浮かび上がってくる効果がある。

映画の後半、真実がすべて明らかになったとき、なんとも言いようのないやるせなさを感じた。(★★★★)