戦争で、家族を失い、家も財産も無い絶望的な状態、復員兵は心的障害で苦しみあえぐ。「ほかげ」はそんな戦後の、生きるための戦争を描いた作品だ。
半焼けの居酒屋に残された未亡人。空襲で家族を失った子供。戦争のトラウマに苦しむ復員兵。これからどう生きたらいいのか、精神崩壊寸前の人間の内面を抉り出すように、カメラがそれを追う。
キャスト陣の演技は皆素晴らしかったが、特に印象的だったのが
居酒屋の未亡人役の趣里さんの迫力のある演技だ。
ドスの効いた台詞回しには強烈だった。
塚本晋也監督の作品は大体見ているが、本作も人間の内面に深く切り込んだ素晴らしい作品であった。(★★★★)